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【本当にそう?】

「オレはコトちゃんの体を動かせない。だから、コトちゃんとオレは一つではなく二つだろ?」と自信を持って言った僕に、それ以上の自信を持ってコトハが応えた。

「本当にそう?

さっき、お兄ちゃん、アイスコーヒー飲んだよね?そのアイスコーヒーって、誰が作ったんだっけ?」

「はあ?コーヒーを作ったのはコトちゃんだよ。あっ、お礼言い忘れてたな。ごめん、ごめん。ありがとな。コトちゃん。」

「別にお礼は、いいんだけど…。とにかく、お兄ちゃんが、コトちゃんにコーヒーを作らせたってことよね?」

「はあ?別にオレ、コトちゃんにコーヒー持って来てくれって頼んでないぜ。」

「でも、お兄ちゃん『コーヒーでも飲んで、少し休みたい。』って、思ったでしょ?」

「まあ、そうかもしれないけど…。だから、それが何?」

「つまり、お兄ちゃんが、『コーヒー飲みたい』って思ったから、コトちゃんが体を動かしてコーヒーを持ってきた。もし、お兄ちゃんが『コーヒー飲みたい』って思わなかったら、コトちゃんは体を動かさなかったの。」と、コトハが続けた。

僕は、コトハが、何を言っているのか理解できず、しばらく「はあ~…?」と呆気にとられていた。

そして、「だから、何なの?

コトちゃんが、オレにコーヒーを作ってくれたことと、『オレとコトちゃんが一つ』っていうことと、何か関係があるっていうのか?」とコトハに尋ねた。

「何で?」と、コトハ。

相変わらず、落ち着いた、静かな口調だ。

「だから、言ったじゃん。オレとコトちゃんは、一つでなく、二つ。

何故なら、オレはコトちゃんの体を動かせないから…」と言っている途中で、僕は、言葉を詰まらせた。

自分で喋っているのに、自分に矛盾があると感じたからだ。

「『僕がコトハの体を動かせない』ことはない、ということを、コトハは、言いたい…?」

すると、コトハが、つぶやくように静かに真剣に言った。

「そうなの。お兄ちゃんがコーヒーを飲みたいと思ったから、コトちゃんの体が動いたの。

それが、現実なの。つまり、お兄ちゃんは、『思った通り』に、コトちゃんの体を動かしたっていうことなの。」

コトハは、落ち着いた様子で、僕の目をじっと見ている。

セミが、また鳴き始めた。

ミーン、ミー、ミー、ミー…。

 

 

つづく

 

【お兄ちゃんのカラダはいくつある?】

 

「お兄ちゃんには、もう一つ、基礎知識を学んでもらわなきゃならないのよね~。」

アイスコーヒーを、僕に手渡しながら、コトハが言う。

「お兄ちゃんもコトちゃんも、時間軸では、永遠だということは、分かったわよね?」

僕は、「まあ、分かったことにするかな。」と、ストローでアイスコーヒーをかき回しながら、適当な返事をした。

「今度は、空間も、永遠ということ。つまり…。」と言って、コトハは、黙った。

「つまり、何?」と、アイスコーヒーをストローで吸い込みながら、僕が適当に返事をすると、コトハは、勇気を振り絞るかのようにして、真剣な表情で、静かに声を出した。

「あのね…。お兄ちゃんとコトちゃんは一つなの。」

突拍子な答えに、僕は鼻からコーヒーを吹き出し咳(せ)き込んでしまった。

しかし、そんな僕に「大丈夫?お兄ちゃん?」なんて同情する気はさらさらないという調子で、コトハは「お兄ちゃんが、コトちゃんの話を、いい加減に聴くからよ!」と言って、僕に、裸のボックスティッシュを投げた。

男の部屋だから、ティッシュボックスにオシャレなカバーなどは、付いていない。

僕は、白色のティーシャツに飛び散ったコーヒーをティッシュで拭きながら、「鼻、イッテエっつうの!」と少し、怒ったフリをした。

しかし、コトハは、容赦なく、「基礎知識の講義」を続ける。

「例えば、お兄ちゃんの体はいくつある?」

「一つに、決まってんだろ。」

「本当に?」

「おー。コトちゃん、今度は、何が言いたいだ?」と、僕が、しょうがねえ奴だなと言わんばかりの口調で応えると、コトハは、僕の気持ちなど関係ないという態度で、質問を続けた。

「じゃあ、聴くけど、お兄ちゃんの体には、いくつ骨がある?」

「骨は、いっぱいあるさ。何個あるかは知らないけど。」

「じゃあ、お兄ちゃんの体は、いっぱいあるってことよね。」

僕は、「あのなあ、コトちゃん。そういうのを屁理屈っていうんだよ。子どものなぞなぞじゃねえんだろ?」と応えながらも、頭を柔らか~くする準備を始めていた。

「コトハのやつ、今度は、何が言いたいんだ?」

突然、セミたちが鳴きやんだ。

 

 

つづく

 


 

 

 

 

【今からは空間のお話】

 

コトハに、「僕は、不幸を選択して生きている。僕は、永遠に生き続けるし、10万年前から生き続けてきた。」と言われた。

コトハの言ってることが、わからない訳ではない。

確かに、反論できなかった。でも、一般的な考えかたとは、かけ離れている。

頭では、分かる気もするが、心では、とうてい理解できない。

そんなことを考えていると、ふと、「さすがに疲れたから、ひと休みしたいな。コーヒーでも、飲むかな…。」と思った。

と同時に、コトハが口を開いた。

「お兄ちゃん、ちょっと、疲れたでしょ?アイスコーヒーでも、作ってあげるね。」と、コトハは楽しそうに、台所の方へと歩いて行った。

「コトハは、オレの考えてることが全部わかるのか?」と、僕は、不思議な気持ちになった。

もしかしたら、これは夢なんじゃないかと思い、ほっぺたをつねったが、やはり、現実だった。そして、ボーっと、物思いにふけった。

「それにしても、昨日まで、笑顔を見せなかったコトハが、明るくなった。何だか、難しい話をするけど、怪しい宗教に入った訳でもなさそうだから、まあ、いいか。これで、ようやく、お父さんお母さんも楽になるだろうし…。」

そんなことを想っていたら、コトハが、ストローの差してある氷入りのアイスコーヒーを片手に持ち、チャリリ、チャリリと音を鳴らしながら戻ってきた。

そして、部屋に入るなり、話し始めた。

「さっきまでは、時間のお話! 今からは、空間のお話よ!」

「まあ、ちょっと、待てよ。まずは、コーヒー飲ませろよ。」と言って、僕がコトハの持っているアイスコーヒーに手を伸ばしたが、コトハは、僕の手の先にあるアイスコーヒーを、遠ざけるようにして笑っている。

コトハの、わるふざけだった。

コトハに昔の笑顔が戻ってきていることが嬉しくて、僕も笑った。

「おい!よこせっつうのぉ!」

セミたちも、笑ってる。

ミーン、ミー、ミー、ミー…。

 

 

つづく

 

 


 

 

 

あなたの愛と価値が解かり、シンクロが起こるカウンセリング。