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続・幸せの方程式(8)

【 生=死① 光より速く 】

 

 

インドは暑い。

うだるような暑さを全く感じていないかのように、シャンカールは涼しげな表情を変えることなく、僕に語りかける。

警察の尋問所でもないというのに、この20畳ほどの広い部屋には、小学生用の木製学習机が一つと、小さな木製の椅子二つだけが置かれている。

僕とシャンカールは、学習机を挟んで、お互いに向かい合い、硬く小さな椅子に座っている。

もちろん、僕の手首に手錠はかかっていない。

「ユウは、形の無いものをどれくらい認識して生きてきたのかね?」

「つまり、生きてきた時間の何分の一を非物質的なものを感じる時間に費やしてきたのかね?」

「その前にユウ自身、形の無いユウであるという認識を持ったことがあるのかい?」

「ユウは、形が無いユウであることを、知らないのか?」

「というより、ユウは、学校で、何を勉強してたんだ?」

「学校には、行ったのかね?」

男子学生服のように黒っぽい顔面、中華料理「八宝菜」に入っているウズラ卵のような眼球、三角定規が入っているかのような鼻すじ。

シャンカールは、大きな眼球で、グリッと僕を見つめ、アーチェリーで使用する一本の弓矢を、自分の鼻先から僕の鼻先に向けて発射させるかのようにして、僕の真正面に座り、僕の心と静かに対話している。

僕は、一言も、話していない。

と言うより、僕が口を開く前に、シャンカールは、僕の言葉を心で聴き、その言葉に対して、また、僕に語りかけてくるのだから、僕は口を開こうにも開けないのだ。

僕の相手への伝達スピードが、ジェット機のコンコルドよりも遅い音速だとしたら、シャンカールの伝達スピードはインターネット回線よりも早い光速。

どう考えても僕には、シャンカールのコミュニケーションスピードには、追いつけない。

シャンカールは昔、言っていた。

「ハートとハートで結ばれる愛のスピードは、この世で最も速い光速より、更に速い伝達物質なのだよ。

アインシュタイン博士はそのことを証明したかったのではないだろうか。」

と。

 

 

つづく

 

 


 

 

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