続・幸せの方程式(2)
【 プロローグ ② 修学旅行から35年 】
僕のココロは激しく叫んでいた。
全身にチカラが入り、緊張している。
その力みと緊張感はカラダの許容範囲を超え、僕の両肩と両腕、そして握り拳とを、ワナワナと小刻みに震わせていた。
「麻里奈を許すなんて、絶対にできない。
オレと同じ境遇で、麻里奈を許せる奴なんて、誰一人いない!
もう、限界だ。
絶対に許せない!
絶対に愛せない!
もう麻里奈と離婚する以外に道はない。
麻里奈との離婚は正義の離婚だ。
オレは何も悪くない。
悪いのは麻里奈だ!
こんなひどい目に遭って離婚しないなんて、オレはただのバカだ。
麻里奈と離婚するオレを非難できる奴なんて、誰一人いない!」
僕は、シャンカールに言われた通り、
麻里奈を許せない気持ち、怒り、悲しみ、胸の痛み、失望、絶望を、全身で、徹頭徹尾、味わい尽くしていた。
すると、ふとした瞬間、その感情に切れ間が射した。
三日三晩、ザァーザァーと激しく降った土砂降りの雨が止み、チュチッチュチッ、という小鳥のさえずりと共に、ネズミ色の空の隙間から、少し黄色味がかった白い一筋の光が大地に射し込むように、僕の感情に一瞬の空白が生じた。
と同時に、カラダの水分が急激な速度で、お腹のあたりに集結し始めた。
その水分は、お腹の赤ちゃんが、元気に激しく蹴り上げるように、僕のお腹をグングン、グングンと圧迫した。
そして、お腹に入り切れず、行き場を失った水分は、背骨に沿って上へ上へと上昇し、噴水のごとくに、僕のカラダの外へ放水された。
まるで、ダムによって満水になった湖のダムの門が、ある日突然開放され、湖水が、「ワアー!」という雄叫びを上げながら、われ先にと上流から下流へ全力疾走で駆け下りていくかのごとくに、
僕のお腹に集結した水分は、僕を大きな声で「ウォー!」と嗚咽させながらノドの中を上昇し、3つのルートに分かれて、僕の体の外へと飛び出した。
一つ目のルートは、目。
二つ目のルートは、鼻。
三つ目のルートは、口。
僕は、全身からかき集めた水分を、涙、鼻水、ヨダレに変化させ、噴水のように体外へと放出した。
その時、僕は、神を信じてもいないのに、心の中で神に叫んだ。
「もう、イヤだ。
何で、オレは、麻里奈を許せないんだ。
もう、これ以上苦しめないでくれ!
麻里奈を愛せない苦痛を味わうのは、もうイヤだ。
麻里奈を許せないのは、もうコリゴリだ。
麻里奈を許させてくれ!
麻里奈を愛させてくれ!
頼むから、もうこれ以上麻里奈を憎ませないでくれ!」
僕は、体内と心内で、何が起きているのか理解できなかった。
が、その時、数学の方程式らしきものが脳裏に浮かんだ。
それが、
「 幸せ = 無 × ワクワク × シンクロ二シティ 」
すなわち、幸せの方程式。