ユング心理学,本当の自分,元型
元型とは
私たちは人生のどこかで、自分でも説明できない「なつかしさ」や「引き寄せられる感情」に出会います。
たとえば、夢の中で見た風景が現実よりも現実味を持ち、あるいは物語の中の人物に涙を流すほど共感してしまう――それはなぜか。
ユングが「元型(アーキタイプ)」と呼んだものは、単なる“心理学用語”ではないようです。
それは人間の深層心理の中にある、時代や文化を超えて共有されている心の“型”。
「元型」は、言葉になる以前の感情の地層
たまに「自分が何を求めているのかわからない」と思っちゃいませんでしょうか…。
それは、私たちが自分の中にある“言葉にならない何か”と向き合えていないから…。
とユングは言います。
そして、ユングはそれを、元型と名付けました。
まさにその“言葉にならない何か”のことを…。
・母なるものへの渇望
・英雄になりたいという夢
・影(シャドウ)に怯える自分
それらはすべて、人間が古代から繰り返し経験してきた感情のパターン。
人間の魂の“深層に沈む地層”のようなもの。
元型との出会いは「癒し」と「混乱」の両面
元型に触れると、人は時に癒されます。
なぜなら、「自分一人だけが感じているわけではなかった」と知るから。
たとえば、ユングが語った「老賢者」の元型。
人生の困難な時期に、心のどこかで「もう一人の自分」が冷静に語りかけてくる感覚。
それは知識ではなく、存在として私たちを支える…。
しかし、元型との出会いは必ずしも快いものとは限りません。
「影(シャドウ)の元型」つまり、自分が目を背けてきた憎しみや嫉妬に出会うとき、
人は強い混乱や抵抗を覚えます。
それでも、ユングは言います。
「自分自身の影を知ることから、真の個性化が始まる」と…。
元型は「人生脚本」を支える無意識の台本
アドラーが「ライフスタイル(人生脚本)」を語ったように、
人は自らの生い立ちや感情をもとに「人生の台本」を無意識に書いているのかもしれません。
元型はその台本の“構造”のようなもの。
人は知らず知らずのうちに、母性を求め、父性に反発し、英雄になろうとし、愛と死を語ろうとします。
それはすべて、人間の元型がそういうドラマを求めているからなのかもしれません。