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本当の自分

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(21)

【ケアレスウィスパー】     コトハが、言う。 「とにかくお兄ちゃんは、『ユリさんと一つ』という普通で当たり前の状態にいた。でもお兄ちゃんは、不幸を選択してその状態から離れてしまった。きっかけは、お兄ちゃんが会社をクビになったこと。」 僕は、「クビじゃねえし。自己都合退職だし…。」と、言い訳するかのようにブツブツ反論したが、相変わらずコトハは、静かに力強く話し続ける。 「とこ […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(20)

【処刑された人の歌】   「お兄ちゃんの好きな、ジョンレノンもそうよね。ジョンレノンは、なぜ、殺されなきゃならなかったの?」 「確かに…。もしジョンが今もこの世に生きてくれていたら、世界はもっと平和になっていただろうに。本当に残念な人を世界は失ってしまった。」と僕は想像し、ジョンの死を悼んだ。 コトハは静かに続ける。 「そういう意味では、ユリさんにも、共通点があるの。」 「ユリちゃんにも […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(19)

【殺される?】     僕とコトハの間にどれくらいの沈黙があっただろうか?   ひさかたぶりの兄妹げんかは、「だから! お兄ちゃんとユリさんが一つじゃないなんて、おかしいのよ!」 というコトハの一言で、あっけなく幕を閉じた。   僕とコトハが沈黙している間、セミたちが兄妹げんかの熱を一生懸命冷ましてくれた。 コトハは熱が冷めたことを確認し、静かに語り始めた。 […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(18)

【高校卒業】       僕とユリとは公立高校を卒業した。   僕は都内の4年制大学に入学し、軽音サークルに入った。   ユリは保育士と幼稚園教諭の資格を取るため、都内の短大に入った。   僕はユリを大学の軽音サークルに誘い、今回は「僕の彼女」とユリを紹介して、サークルの部長からユリの入部許可をもらった。軽音サークルのメンバーは、僕とユリ […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(17)

【高校時代】     中学3年の終わり、二人は同じ公立高校を受験した。 ユリは頭が良かった。偏差値の高い進学高校に、入学できる学力を十分に持っていた。でも、ユリは僕と同じ最寄りの公立高校を受験した。 ユリの両親や担任の先生は「もっと偏差値の高い進学高校を受験したらどうだ。」と、ユリを説得した。 しかし、ユリは言った。「遠い高校は通学が疲れる。近くの高校のほうが友達もたくさんいて […]