幸せの方程式(18)
【潜在意識⑧ 自分で作った運命】
シャンカールは続ける。
「彼は、チャンスをもらったのだよ。
彼はああして、猛禽の餌食になり、痛い目に遭いながら反省し、新しい運命を決断した。
彼は、今、あちらの世界で、1500gの未熟児として、生まれているだろう。
生命力が弱いため、『オギャー!』という産声(うぶごえ)も発せらないで生まれているはずだ。
彼は、生命力の弱い父と生命力の弱い母の、子どもになることを決心したようだ。
彼は、生まれた時から、難病を背負うだろう。
小学校にも中学校にも登校できず、青年期をずーっと病院で暮らすことになるだろう。
しかし、その後、彼は医者になる。
彼は猛禽の餌食になり、痛い目に合いながら考えた。
『自分が、病気でトコトン苦しめば、自分が医者になった時、患者の気持ちにしっかり寄り添えるのではないだろうか。
そうすれば、前回のように患者の気持ちを無視してお金を稼ぐようなことはしないのではないだろうか。』とね。
彼は立派な医者になり、患者の治療に専念するだろう。
そして、そのことに、金銭的な報酬以上の喜びと生き甲斐を感じることだろう。
彼は、そういう計画を立てて、あちらの世界へ行った。
きっと、彼は、その計画、すなわち『自分で作った運命』を全うす…。」
近くにいる誰かが、いたずらで僕のリモコンの『一時停止』ボタンを押し、僕が観ているDVD映画を突然ストップさせたかのように、シャンカールが、突然、静止した。
僕は、目を開けた。
シャンカールは、僕の目の前に座り、真正面から僕に対面している。
僕は、硬く小さな椅子に腰掛けている。
ここは、公園の白いベンチではない。
今度は、こちらの世界のシャンカールが口を開いた。
「潜在意識が分かってきたかね?」
僕は、現実と潜在意識とのギャップに戸惑いながら、目を瞬(まばた)きさせ、最後に3秒間「ギューッ」と力を入れて瞼(まぶた)を閉じ、再度、目の前のシャンカールに向かった。
「人間は、生と死の両方を同時に体験している。
眠っている時は死に近く、目覚めている時は生に近い。
しかし、必ず、生と死の両方を同時に体験している。
だから、生だけの生はなく、死だけの死もない。
この世に男性だけの世界がなく、女性だけの世界がないのと同じだ。
そして、ユウは、寝ている時、自分で作った夢を自分で見ている。
目覚めている時、自分で作った現実を自分で見ている。」