幸せの方程式(32)
【 インディア ④ ガンジス 】
「あとは、僕の自由ということか。」
シャンカールの「やるかやらないかは、ユウが決めることだ。誰もユウを助けられない。誰もユウに干渉できない。ユウは完全に自由だ。同時に、ユウは全責任を負う。」という言葉が思い出される。
僕は、外に出て、ガンジス川へ向かった。
3年ぶりに再会したガンジスは、相も変わらず、大量の水をゆったり静かに淡々と流し続けている。
夜も昼も。
冬も夏も。
ガンジス川下流には、神様の化身とされるウシ・サルの糞尿や人間の死体などが流れて来るが、こちらの上流には、ただ美しく透明に澄んだ水だけが静かに淡々と流れている。
夜も昼も。
冬も夏も。
「人はヒマラヤで生まれガンジスに流されて、この世にやって来る。そして、この世の営みを終えると、またガンジスに戻って海へ流れて逝く。」と、インドの人たちは信じている。
訪れし命に歓喜を味わい。
去り逝く命に哀しみを味わう。
喜びと悲しみが同居しているのが、生命であり、人生だ。
死の悲しみが無い生もなく、
誕生の喜びの無い死もない。
人生もガンジスと同じ。
命を逝き来させ、喜びと哀しみを逝き来させるのが人生であり、その流れに乗ることが生きるということ。
喜びがあれば、哀しみがあり、
昼があれば、夜があり、
夏があれば、冬があり、
不幸があれば、幸せがある。
そして、異質なものが、一つになると、新しい光が生まれる。
ただ、それだけのこと…。