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自分が好きになる

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(23)

【1ヶ月前の今日】     僕は大学3年の時に軽音サークルを辞めた。 大学論文とアルバイト、就職活動が忙しくなったからだ。もちろん一番の理由は、ユリが短大を卒業し軽音サークルを辞めたからだった。 ユリは短大で、保育士と幼稚園教諭の資格をとり、自宅でピアノ教室を開いた。そして、「ピアノ教室の生徒がある程度集まるまで。」という条件で、保育園の手伝いをしたり、近所の「ロトール」という […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(22)

【お兄ちゃんの素晴らしさに気づかせてなるものか!】   コトハは、語気を強めて言う。 「お兄ちゃんは、確かに勉強もできない。仕事もできない。お金も稼げない。 でも、お兄ちゃんには、優しさが『ある』の。お兄ちゃんには純粋さが『ある』の。」 「褒めてるんだか、けなしてるんだか、分かんないんだけど…。」と、いじけるように応える僕。 「褒めてんのよ!コトちゃんも、そんなお兄ちゃんに何度も、助けら […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(21)

【ケアレスウィスパー】     コトハが、言う。 「とにかくお兄ちゃんは、『ユリさんと一つ』という普通で当たり前の状態にいた。でもお兄ちゃんは、不幸を選択してその状態から離れてしまった。きっかけは、お兄ちゃんが会社をクビになったこと。」 僕は、「クビじゃねえし。自己都合退職だし…。」と、言い訳するかのようにブツブツ反論したが、相変わらずコトハは、静かに力強く話し続ける。 「とこ […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(19)

【殺される?】     僕とコトハの間にどれくらいの沈黙があっただろうか?   ひさかたぶりの兄妹げんかは、「だから! お兄ちゃんとユリさんが一つじゃないなんて、おかしいのよ!」 というコトハの一言で、あっけなく幕を閉じた。   僕とコトハが沈黙している間、セミたちが兄妹げんかの熱を一生懸命冷ましてくれた。 コトハは熱が冷めたことを確認し、静かに語り始めた。 […]

本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(17)

【高校時代】     中学3年の終わり、二人は同じ公立高校を受験した。 ユリは頭が良かった。偏差値の高い進学高校に、入学できる学力を十分に持っていた。でも、ユリは僕と同じ最寄りの公立高校を受験した。 ユリの両親や担任の先生は「もっと偏差値の高い進学高校を受験したらどうだ。」と、ユリを説得した。 しかし、ユリは言った。「遠い高校は通学が疲れる。近くの高校のほうが友達もたくさんいて […]