本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(12)
【1円玉より小さい何か】 「罪悪感があるからよ。」と、コトハは言った。 僕はまた、いつの間にか、目の前にコトハがいることを忘れていた。そして、そのコトハの言葉に、僕は心の内を見透かされているような気がして大きく動揺した。 胸の呼吸か心臓の鼓動かは分からないが、胸の奥が、やたらドキドキしている。ただ僕は無言のまま、コトハの目を見つめている。 コトハは静かに続けた。 「お兄ちゃん。コトち […]
【1円玉より小さい何か】 「罪悪感があるからよ。」と、コトハは言った。 僕はまた、いつの間にか、目の前にコトハがいることを忘れていた。そして、そのコトハの言葉に、僕は心の内を見透かされているような気がして大きく動揺した。 胸の呼吸か心臓の鼓動かは分からないが、胸の奥が、やたらドキドキしている。ただ僕は無言のまま、コトハの目を見つめている。 コトハは静かに続けた。 「お兄ちゃん。コトち […]
【罪悪感があるからよ。】 しばらくしてから、また、コトハはゆっくり「基礎知識の講義」を始めた。 「実際、お兄ちゃんの体の中でも、その当たり前で、普通のこと、つまり、生かし合いと助け合いが、毎日、行われているの。 例えばお兄ちゃんが御飯を食べると、お兄ちゃんの頭や手や足が、胃袋に献血するの。 お兄ちゃん、知ってた?お兄ちゃんの頭や手や足が、『胃袋さん、消化、ご苦労様!これっぽっちしかないけど…。ボク […]
【あたり前で普通のこと】 ミーン、ミー、ミー、ミー…。 セミの声が、やけにうるさい。 僕の頭は混乱している。 「僕が?コトハを?『思い通りに』?動かしている?どういうこと?」 茫然としている僕に、コトハは穏やかな声でゆっくり続けた。 「逆に、コトちゃんがお兄ちゃんの体を動かしたこともあったよね?」 「えっ?そんなことあった?オレが、コトちゃんに動かされたってこと?」 「 […]
【本当にそう?】 「オレはコトちゃんの体を動かせない。だから、コトちゃんとオレは一つではなく二つだろ?」と自信を持って言った僕に、それ以上の自信を持ってコトハが応えた。 「本当にそう? さっき、お兄ちゃん、アイスコーヒー飲んだよね?そのアイスコーヒーって、誰が作ったんだっけ?」 「はあ?コーヒーを作ったのはコトちゃんだよ。あっ、お礼言い忘れてたな。ごめん、ごめん。ありが […]
【ぜーんぶ一つに繋がっている。】 コトハは、『一つ』という言葉をキーワードにしたいのかもしれない…。 僕は、頭を柔らかくして、そんなことを考え始めていた。 すると、コトハが、「それじゃあ、もう一つ質問!頭を柔らか~くして、考えてよ~。」と、僕の心を見透かすかのごとく、話を続けた。 「地球は、いくつあるでしょうか?」 「そりゃあ、一つだろ。」と僕は言いかけて、止めた。 コ […]