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本当の自分に出会う物語 【 コトちゃんはひきこもり 】(4)

【そりゃー、嬉しいに決まってんだろっ!】

 

僕が小学生、コトハが幼稚園生の時、コトハが幼稚園でヒマワリの種をもらって来た。

「お兄ちゃん、タネまいて!」と幼稚園児のコトハに頼まれた僕は、庭の適当な場所にヒマワリの種を蒔いた。

あれから、もう10年。

何の手入れもしていないが、毎年、夏になるとヒマワリの花が咲き乱れる。

コトハは、静かに話を続けた。

「ヒマワリは、秋になると枯れて死んでしまう。

でも、また次の年の春に芽を出して、夏には花を咲かせる。つまり、ヒマワリは『生き続けている』の。

お兄ちゃんが、『冬になった時、ヒマワリは枯れて死んだ。』と言っても、その表現が間違っているとは言わないわ。

でも、ヒマワリはこうしてずーっと生き続ける。

来年も再来年も、またその次の年も。

そして、人もヒマワリと同じ。

つまり、人も、永遠に生き続けるの…。」

窓の外のヒマワリを見つめながら話していたコトハが、静かに振り向き、僕の目を見て続けた。

「信じられないと思う。でも、お兄ちゃんもコトちゃんも永遠に行き続ける。それが真実なの。」

コトハのまなざしは真剣だった。

だから、僕も冗談っぽく返事するのを止め、「まあ、確かに、コトちゃんの言うことも、わからない訳じゃないんだけど…。」と、静かに応えた。

すると、コトハは急に嬉しそうな表情を見せ、明るい声を出した。

「お兄ちゃん!分かったんだったら、これからはそういう前提で生きていくの!」と。

急に明るくなったコトハに驚きながら、僕は、「えっ、どういう前提?」と、コトハに訊き返した。

「だから~っ!『ずーっと、この世で行き続ける。』っていう前提で、お兄ちゃんは、今日から生きていくの!」

「はぁ?だから、何?」と言いたげな僕の気持ちを察し、コトハはそのまま話を続けた。

「お兄ちゃん、じゃあ、一つ考えて!

頭を柔らか~くして。想像するのよ~。」

と、今度は何やらニヤニヤしている。

 

「『これから、お兄ちゃんは、死なずにずーっと永遠に生き続けるのぉ~。』

そう思ったらお兄ちゃん、嬉しい?それとも、嬉しくない? さあ~、どっち?」

僕の心は、大きく動揺した。

心の中に、震度4くらいの揺れを感じた。

「ウ・レ・シ・ク・ナ・イ……。」

僕の心に沈黙が流れた。

さらに、暗くてイヤな感情が続いた。

「できれば、オレの人生いつか終わってもらいたい…。

永遠に生き続けるなんて疲れる…。

嫌だ…。しんどい…。」

そんな感情だった。

少なくとも、「えっ、永遠に生きられる? そりゃー、嬉しいに決まってんだろっ!」という感情は、これっぽっちも出てこなかった。

黙ってしまった僕の気持ちを察したかのように、コトハは少し低い声で、僕に尋ねた。

「あんまり、嬉しくない…よね?」

また真剣な、まなざしをしている。

僕は、「んっ?んん~…。」と、コトハの言葉を否定できずいた。

「それが、お兄ちゃんが不幸を選択して生きている証拠。

だから、これから、お兄ちゃんは『永遠に生き続ける』ことを前提にして生きるの。

そうしたら、同じ質問をされた時、お兄ちゃんはこう答えるように変わるの。

『そりゃー、嬉しいに決まってんだろっ!』って。」

 

僕は、心の中を全て見透かされているようなバツの悪さを感じ、言葉を出す気力を失っていた。

相変わらず、セミたちは、元気に鳴いている。

ミーン、ミー、ミー、ミー…。

 

 

 

つづく