【もう一つの質問】
落ち込んでいる僕を励ましたいのか、それとも、僕の気持ちを全く察していないのかは分からないが、コトハは明るい声を出して言った。
「それじゃあ、お兄ちゃん、もう一つ質問ね!
頭を柔らか~くして。想像してみてね~。」
コトハは、また、ニヤニヤしている。
「じゃあ、行くよ~。
お兄ちゃんは、今まで、何年生きて来たのでしょうか?」
「何年って、24年に決まってんじゃん。24歳なんだから…。」と、僕が、いじけたような力のない声で答えると、コトハは、僕をからかうかのように言う。
「ブブブブッ、ブブブブッ~!お兄ちゃんは、全然、分かってないね~!コトちゃんの話をちゃんと聴きなさい!」と、僕の頭を軽く叩くのだった。
「さっき、人は永遠に生き続ける、って言ったじゃない!」
「永遠に生き続ける?」と冴えない声で、僕が応えると、
「そうよ!
だから〜、お兄ちゃんは何年生きてきたのでしょお~か?」
と、コトハは、『もう一つの質問』を繰り返した。
「ん?オレが生まれる前から、オレは生きてきたって、オレに言わせたい…?」
と、僕が言い終わるか終わらないうちに、
「ピンポン!ピンポン!ピンポーン!」
と、コトハは、また、からかうように言い、「だから、お兄ちゃんは、何年、生きてきたのでしょ~うか?」と更に『もう一つの質問』を繰り返した。
「え、そんなの分からないよ。」という僕に、コトハは、得意げな表情をして、説明を始めた。
「『約10万年前に、ヒトはアフリカで誕生した。』という説が、今、一番有力なの。だから、お兄ちゃんも、コトちゃんも、10万年生きてきたの。つまり、お兄ちゃんも、コトちゃんも、10万歳なの!」
からかうように話すコトハの笑顔に、僕の気持ちも少し晴れてきた。
そして、「よく分かんないけど、まあ、そういうことにするかっ?」と、僕は照れ笑いで返した。
庭のヒマワリたちも笑っている。