本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(9)

【本当にそう?】

 

本当の自分に出会う物語

 

「オレはコトちゃんの体を動かせない。だから、コトちゃんとオレは一つではなく二つだろ?」と自信を持って言った僕に、それ以上の自信を持ってコトハが応えた。

「本当にそう?

さっき、お兄ちゃん、アイスコーヒー飲んだよね?そのアイスコーヒーって、誰が作ったんだっけ?」

「はあ?コーヒーを作ったのはコトちゃんだよ。あっ、お礼言い忘れてたな。ごめん、ごめん。ありがとな。コトちゃん。」

「別にお礼は、いいんだけど…。とにかく、お兄ちゃんが、コトちゃんにコーヒーを作らせたってことよね?」

「はあ?別にオレ、コトちゃんにコーヒー持って来てくれって頼んでないぜ。」

「でも、お兄ちゃん『コーヒーでも飲んで、少し休みたい。』って、思ったでしょ?」

「まあ、そうかもしれないけど…。だから、それが何?」

「つまり、お兄ちゃんが、『コーヒー飲みたい』って思ったから、コトちゃんが体を動かしてコーヒーを持ってきた。もし、お兄ちゃんが『コーヒー飲みたい』って思わなかったら、コトちゃんは体を動かさなかったの。」と、コトハが続けた。

僕は、コトハが、何を言っているのか理解できず、しばらく「はあ~…?」と呆気にとられていた。

そして、「だから、何なの?

コトちゃんが、オレにコーヒーを作ってくれたことと、『オレとコトちゃんが一つ』っていうことと、何か関係があるっていうのか?」とコトハに尋ねた。

「何で?」と、コトハ。

相変わらず、落ち着いた、静かな口調だ。

「だから、言ったじゃん。オレとコトちゃんは、一つでなく、二つ。

何故なら、オレはコトちゃんの体を動かせないから…」と言っている途中で、僕は、言葉を詰まらせた。

自分で喋っているのに、自分に矛盾があると感じたからだ。

「『僕がコトハの体を動かせない』ことはない、ということを、コトハは、言いたい…?」

すると、コトハが、つぶやくように静かに真剣に言った。

「そうなの。お兄ちゃんがコーヒーを飲みたいと思ったから、コトちゃんの体が動いたの。

それが、現実なの。つまり、お兄ちゃんは、『思った通り』に、コトちゃんの体を動かしたっていうことなの。」

コトハは、落ち着いた様子で、僕の目をじっと見ている。

セミが、また鳴き始めた。

ミーン、ミー、ミー、ミー…。

 

 

つづく

 

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