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本当の自分に出会う物語「コトちゃんはひきこもり」(14)

【ひさかたぶりの兄妹げんか】

コトハは、声のトーンを落とし真顔で言う。

怒っているようだ。

「だから、み~んな一つなの!お兄ちゃん、自分で言ったのよ!ヒマワリの種は一つ。宇宙も一つ。お兄ちゃんも一つ。コトちゃんとお兄ちゃんも一つ。

そして、そんなの当たり前っつうか普通のことじゃんって、お兄ちゃんが言ったのよ!

だから、み~んな一つっていうことが当たり前で普通なの!

こんなヒマワリの種より小さかった宇宙が一つじゃないわけがないの!一つじゃないなんて、おかしいの!別々とかバラバラだなんて、おかしいのよ!」

コトハの怒りの感情に触発された僕は、「売り言葉に買い言葉だ!」と言わんばかりに、感情をあらわにして反撃を開始した。

「だから何なんだよ!ワケ分かんねえな!そんなもんオレの知ったことかよっ!」

こんな兄妹げんかは何年ぶりだろうか?とにかく、ひさかたぶりの兄妹げんかが始まった。

コトハは、「お兄ちゃんになんて負けないわよ!」と言わんばかりに、強い声を出した。まるで強靭に鍛えあげられた筋肉のような、硬さと強さを持った声だ。

「本当に、お兄ちゃんは鈍(にぶ)いわねっ!

お兄ちゃんとユリさんが、バラバラだなんて、おかしいのよ!」

「………………。」

僕の心臓は、止まった。

ひさかたぶりの兄妹喧嘩は、ほんの5秒で、あっけなく終了してしまった。

僕の負けだ。

今日は7月7日。ちょうど1ヶ月前に僕はユリと別れた。

しかし次のコトハの言葉が、僕の心臓に血液を循環させる仕事を再開させた。

「でも、お兄ちゃんが悪いんじゃないのよ。

お兄ちゃんの罪悪感が、一つになることを受け容れられないの。

お兄ちゃんの罪悪感が、一つになることを拒もうとするの。

お兄ちゃんの罪悪感が、不幸を選択してしまったの…。」

コトハの声は、静かで穏やかになっていた。どことなく哀しみを抱えている。

しばらくお互いに黙った。

セミが、また鳴き始めた。

兄妹げんかの熱を、一生懸命冷ますかのように…。

徐々に、僕の熱さと暑さが柔らかくなっていく…。

ミーン、ミー、ミー、ミー…。

 

 

つづく