花子の不倫(22)最終回「はなっこ食堂」

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《 前回までのあらすじ 》
花子は太郎と不倫してしまう。
しかし、コトハに出会ったことがきっかけで、太郎への気持ちは消える。
そして5年ぶりに、炊き出しのボランティアをした。
そこで、赤茶色のコートを着ていた女性に再会。
その女性は、花子との出会いがきっかけで、絶望の淵から立ち直っていた。
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5年ぶりの再会

 

「もしかして、あの時の?」と声をかけられ、花子は、座ったまま目を上げた。

そして、目を丸く大きく、110%サイズに膨らませ、「えっ!? もしかして、あのときの!?」と、驚いておうむ返しのように同じ言葉を繰り返して、飛び上がるようにして立った。

5年前の赤茶色コートの女性とは、別人だった。

ふっくらとしているし、輪郭も、花子の記憶とは違っていた。

唯一、目の面影だけは一致している。

「あの細い目と長いまつげ…それだけは私の記憶と一致している。

でも、頬の輪郭や鼻筋は全く違う…でも、きっと、あのときのように痩せていないし、お化粧もしているから、そう見えるのだろう…

5年前と同じで、凛とした美しさと、清々しい潔さのオーラを放っている…だから、あのときの女性に間違いない…」

と確信した。

 

2つ目の秘密

 

5年前、スミレは、花子に出会ったのち、絶望をやめ、生き続けることを決心した。

まず、秘密厳守の探偵事務所を訪ね、裏ルートから、日本の公安トップと面接し、世界の頂点で地獄を見たことなどを説明した。

さすがに公安トップは、世界の裏事情をある程度知っていた。

スミレの状況を理解し、スミレに新しい名前と戸籍とを与え、整形手術を受けさせた。

だから、花子の推察は正しかった。

頬や額を丸くし、鼻筋を通す手術を行ったのだから、実際に輪郭や鼻の形は違っている。

しかし、スミレは、そのことを花子には言えない。

それが、スミレがあるものたちから殺されずに生き抜くための2つ目の秘密になっていた。

 

はなっこ食堂

 

そんなスミレを、花子は泣きそうな顔で抱きしめるながら言う。

「良かったぁ〜。生きていらっしゃったのですねぇ〜。ホント良かったぁ〜。なんだか、心配だったんです。

もしかしたら、自殺でもされちゃうんじゃないかって…

なんでそんなに心配になるのか分からないんですけど…

なぜか心配で心配で、ずっと気になってたんですよぉ〜。」

 

「ありがとう、はなこさん!」スミレも、花子をギューっと強く抱く。

今日は、ちゃんとシャワーも浴びてきているし、歯も磨いてきている。

だから、今日は、花子をハグすることに、何の躊躇もない。

「あれ?でも、なんで、私の名前を?」と花子。

「あの時、誰かが『はなこさん!』って呼んでるのを聞いて、絶対に、忘れないって思ったんです。

それで、結局、はなっこ食堂を作っちゃいました。」とスミレが応える。

 

抱きしめてくれた感動、心も体も温めてくれた感動

 

花子は、抱き寄せていた距離を30cmくらいに遠ざけてから、スミレの目を見て聞き返す。

「え?あの『はなっこ食堂』?子どもたちには御飯と豚汁を無料で提供する?

この前テレビで紹介されていた?私も、こういう食堂があったら良いのになぁって思ってたから、とても嬉しかったのよぉ〜!

えぇ〜!もしかして、それを始めたのがあなたって言うこと!?」

 

「はい! そうです。テレビ、ご覧になられたのですか?

私がはなこさんにしてもらった、あの時の感動、臭くて、汚い私を抱きしめてくれた感動、心も体も温めてくれた感動を、少しでも、一人でも、多くの人に伝えたいと思いまして。

とりあえず、お店を出したんです。

利益は取らないって決めて、とにかく、安くて、温かい、ご飯と豚汁を提供したんです。

そしたら周りの人が応援してくれて、出資してくださるかたも現れて、お店の数が少しずつ増えていったんです。

それで、『いつか、はなこさんに来てもらいたいな』『一緒にそれができたら、最高だな』って思って、ずっと、はなこさんを探していたんです。

それで、毎回、この炊き出しに、足を運んで来てたのですが、なかなかお会いできなくて、もう無理かなって諦めかけていたところだったんですよ。

良かったです!お会いできて!いつか、一緒にやってもらえませんか?」

 

本気で人を愛したかった

 

その時、花子は、ふと、喫茶店で出会ったコトハの言葉を思い出す。

「もっと、情熱的に、激しく、刺激的に、本気の愛を貫かれる方が良いんじゃないでしょうか…

お料理を作ってあげるとかぁ、お掃除してあげるとかぁ、話を聞いてあげるとかぁ、健康を気遣ってあげるとかぁ、

それが、愛情表現であることには違いない…

でも、それが本当の恋愛かどうかというと、それは違うっていうか…

彼のためにやることは、欲求だとか、情熱だとか、そういう類いのものであって、恋愛とは違う…やっぱり花子さんは、欲求不満だったんですよ!

本気で人を愛したかったんですよ!

だけど、それができていなかった。

そして、その欲求不満を晴らす対象が彼だった。

だから、恋愛したんじゃなくて、花子さんは、本気で人を愛したの!」

 

スミレの目を見直した時には、「うん。やる!できるかどうか分からないけど、私のやりたかったことだし、もう不倫はイヤだから。」と、花子の口が勝手に動いて喋っていた。

 

銀色の大きな丸いお盆

 

「えっ?フリン?」とスミレが笑って、問いかける。

花子は、「しまった」という表情を作って、顔を赤くし、口を右手で覆う。

「いえいえぇ〜。こっちの話でぇ〜。まあ、とにかく、ちょっと職場を変えるタイミングに来ているような気がしてたんでぇ〜」とスマイルゼロ円の笑顔で、頭をかきながら照れ笑いする。

 

が、少し冷静さを取り戻し、「でもぉ〜。やっぱりぃ〜。はなっこ食堂の花子はちょっとキツいかなあ?」と続けた。

 

その時、

「大丈夫ですよぉ!」とまた別の人の声がした。

振り向くと、銀色の大きな丸いお盆の上に、麦茶の入ったグラスを4つ載せ、高校生のような若い女の子が笑っている。

 

 

 

おしまい

 

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