続・幸せの方程式(5)
【 有=無 ③ 強風帯 】
僕は、シマウマの群れとチータが作り出した低気圧の中心へ、全自動ドラム洗濯機の中でガランガランと洗濯されている感覚と、大型サイクロン掃除機のハイパワー吸引モードで吸い込まれている感覚を、同時に味わいながら吸い込まれていった。
しかし、僕がその中心に近づく頃には、低気圧はその勢力を失っていた。
その代わり、サバンナの熱く乾燥した空気と、黄土色がかった白い砂ぼこりが、高気圧に身を変え、下から団扇(うちわ)で煽(あお)るように、僕を上空へと吹き上げた。
空気よりも軽いヘリウムガスの入った風船がフワリフワリと大空へ舞い上がっていくように、僕は上空1万mくらいのところまで上昇し偏西風らしき大きな強風帯に合流した。
インド北西部を流れるガンジス川のように豊かで力強い流れを持つその強風帯は、僕が海にいた時の何百万倍もの速さで、僕を押し流した。
それから、3時間くらい経過しただろうか、僕の目の前には、見覚えのある光景が現れた。