花子の不倫(5)不純でない純粋な気持ち

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《 前回までのあらすじ 》
(2人の子どもを持つ母親)花子は、スーパーでパートをしている。

そこで、7つ年下の太郎に出会い、太郎に恋愛感情を抱いてしまう。

そして、太郎をお茶に誘ってしまうが、自分の気持ちは浮気なのではなく本気なのだと、自分に言い聞かせてしまう。

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もっと元気づけたい

 

太郎は、ほうじ茶ラテを、ほぼ飲み終えている。

30個ほど入っていた、黒く柔からなタピオカは、レンゲのような大きいスプーンで、すべて拾いあげられ、もう、カップの中には、残っていない。

「美味しかった?」と花子。

「はい。まあ。」と、太郎は、そこそこ満足そうに応える。

花子は、ゲームと太郎を肯定することで、太郎の心を開くことに成功し、気持ちを高揚させていた。

そして、「もっと太郎を元気づけたい」と思うようになっていた。

と同時に、心の中で、「私は、純粋な気持ちで、太郎くんを元気づけているのよね? 決して、不純な気持ちで太郎くんの心を開いているのではないよね?」と懸命に自分自身に確認を取っている。

 

名 案

 

その時、ふと、さらに太郎を勇気づける「名案」が浮かんだ。

「そうだ! 太郎くんに何かの役に立たせてあげて、 そのことにお礼してあげればいいんだ!」と。

そして、花子は、一瞬のうちに「太郎に息子のゲーム機を処分させる計画」を企(くわだ)てる。

花子の胸は、再び、ソワソワ・ドキドキしている。

 

計画実行

 

さきほどのゲームの会話からは、まだ、20秒ほどしか経過していなかったので、花子は「でもねぇ〜」と切り出した。

「息子は、部活に夢中で、もう、ゲームはやらないんだよねぇ。

 遊び終わったゲームとかって、 太郎くんは、どうしてるの?」

太郎が、

「だいたい、中古ショップで買い取ってもらってますよ。

 うん百円程度にしかならないっすけど。

 ゴミの分別とかも面倒なので、買い取ってもらう方がラクっすよ。」

と応える。

「あっ、そう。

 でも、私、中古屋さんに持って行くのが、どうも苦手で…。

 あの独特の雰囲気っていうのかなぁ…。」

「そうっすよね。分かりますよ。

 あのアニメのフィギュアとかが置いてある、オタクっぽい雰囲気って、普通の人には、なんか入りにくいっすよね。」

と太郎は、相変わらず、花子の話に素直に乗ってくれる。

「いやいや、太郎くんがオタクなわけじゃなくて…。

 それに、私、オタクって言われてるような草食系男子が、キライじゃないし…。」

と、花子は「キライじゃない」と発した言葉が、太郎のことを好きだと告白してしまった言葉なのか、純粋に、太郎を肯定したくて発した言葉なのかが、分からなくなり、花子は、さらに、ハラハラ・ドキドキしてしまったが、そのまま続けた。

「たぶん、太郎くんがこの店に入りにくかったのと同じっていうか…。

あっ!

じゃあ、もしよかったら、息子のゲームを、太郎くん、もらってくれない?

そしたら、少しは太郎くんのお小遣いにもなるでしょ。

私も、中古屋さんに行かなくて助かるし…。」

 

計略にハマる太郎

 

すると、太郎は、何の疑いもなく、素直に冷静に応える。

「別に良いっすよ。

何かのついでの時に持って行けば、全然、大丈夫なんで。」

あっけなく、太郎が花子の計略にはまってくれたことが、花子に自信を与えたのか、花子は、再び、軽率で危険な提案をしてしまう。

「確か太郎くん、火曜日お休みだよね。

私、火曜日は早番で、仕事が早く終わるから、その時に、太郎くん家(ち)に持って行っても良い?」

と。

 

アドレス交換とアポイントメント

 

 

花子は、

「しまった!

私、また、なんてこと言ってしまったんだろう?

今のは撤回しなきゃ!?」

と、自分が言ったことに恥ずかしさを覚え、危うい提案を撤回しようとしたが、この店を誘った時と同じく、あまりにあっさり、太郎が、

「全然、大丈夫っすよ」と、それを承諾してしまったので、花子は、撤回の言葉を挟むこともできず、結局、太郎とメールアドレスを交換し、来週のアポイントまで、取ってしまう。

そして、花子は、残っていたアイスラテを飲み干し、改めて、火照(ほて)った体を冷やして、気持ちを落ち着けた。

 

ごくフツウの会社の同僚

 

その時、2人のほうじ茶ラテは飲み干された。

花子が亀田珈琲に入った口実が、「タピオカラテを飲む」ことだったので、その目的を済ませると、もう、2人には、店内に残る理由がなかった。

なので、花子は「じゃあ、行こうか?」と太郎に声をかけて、女子たちの笑い声で賑わう亀田珈琲店から出る。

そして、

「ほうじ茶ラテ美味しかったね。 お疲れ様!また、明日ね!」

と、あえて、冷静を装い、ごくフツウの会社の同僚のフリをして太郎と別れた。

花子が、自分自身に「私が太郎くんを誘った動機は、不純な動機でなく、純粋な動機だったのだ」と言い聞かせるためにも、花子は、そうしなければならなかった。

 

不純ではない純粋な愛情

 

しかし、花子のココロは混乱している。

自分が平常心を失っていることは明らかだった。

「私、やっぱり、おかしい。

このままじゃ、まずいかも。

私、どうしちゃったんだろう?

メールまで、交換しちゃった。

そして、来週の火曜日に…、

私は…、

太郎くんの家に行く…。」

そのことに、胸をときめかせている事実を、もう、花子には否定できなかった。

つまり、恋愛感情を抱いていることは、紛れもない事実だった。

そして、

「これは、不純な恋愛感情ではない。純粋な恋愛愛情なのだ。」

と正当化をすることしか、天罰から免れる方法はないような気持ちになっていた。

さらに、それは同時に、今までの夫への愛情を否定することにもなっていく。

 

 

また次回に続けますね。

よかったら、引き続きお付き合いくださいませ。